帝国の興亡〈上〉―グローバルにみたパワーと帝国



帝国の興亡〈上〉―グローバルにみたパワーと帝国
帝国の興亡〈上〉―グローバルにみたパワーと帝国

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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読みにくいけど

「本書の根本的な目的は、ロシア史をその国際的な文脈のなかに置いて見るということにあ
る」(20頁)と著者が述べているように、上巻として区分される本書は議論の下地にすぎないといえる。
また、これも著者が述べていることだが、専門はロシア史であるため、イギリス、オスマン、
オーストリアなどの歴史を叙述するにあたり、専門家にとってみれば不正確な叙述が出てくる
のもいたし方のないことだろう。
著者が示したように、大英帝国、オスマン帝国、ハプスブルク帝国の歴史を相互に比較する
と、さまざまな相違点や類似点が出てくる。
そうすると、いったいこれらの国を「帝国」という同一の言葉で表現する理由は果たしてなん
なのだろうか? 管見の限り著者は明確には答えていない
というのも、著者が提示する「帝国」の定義とはきわめて曖昧なものだからである。
きわめて単純に言えば、強大なパワーを持ち、それを背景に多くの地域を支配する国家が、
リーベンの言う「帝国」であろう。
このような定義のもとにくくられた各帝国に、さまざまな相違点や類似点が存在するのは当然
であろう。また、彼が帝国として見なしていない国家と比較してもそれは同様である。
しかし、この点こそがまさに著者の一番言いたかったことだと思われる。
つまり、「帝国は余計なものであり、邪悪で、消滅する運命にある」(34)という見方からの
脱却を図っている。
上巻で提示されるのは、「帝国」は歴史的に見て決して上のようなものではない、ということ
である。

帝国の概観

上巻は、巨大帝国の概観に留まる。そのため、下巻とは別物として読んだ方が良いかもしれない。

書評には、ユーモアがありと書いてあるが、それは筆者がイギリスの中産階級とドイツの貴族階級とロシアの将校の先祖を持つ人が、このような研究をしたという点であろうか。この意味できわめてイギリス的なイヤミの効いた状況である。
帝国とは、国王と臣下体制の上で、異民族を支配することであるという定義であるが、かなり曖昧な意味で使われている。この点で問題があると思うが、大国といえばいいだろう。この定義の上で、ローマ帝国、オスマン帝国、神聖ローマ帝国、大英帝国、第三帝国、帝政ロシア、ソビエトが、どのように異民族を支配下において、崩壊するかを書いている。現代アメリカについて書いていないのは明らかに片手落ちであるが、その後のヒントになるだろう。
ロシア・ソ連の帝国的性格を解き明かす

 ここ数年来、国際関係論の世界ではアメリカの覇権の在り方に絡めていわゆる「帝国論」が大流行ですが、本書については、どちらかと言えば純粋に史学的な見地から、歴史上の諸「帝国」との比較においてロシア・ソ連の特質を解明し、併せて北ユーラシアの将来にも言及していくといった趣向になっています。
 「帝国」とは何かにつき筆者は明確な定義を避けていますが、おそらく国民の枠組みを超えた、被統治者の同意に基づかない政治的結合の枠組みといったイメージで捉えているようです。そして、大英・オスマン・ハプスブルグ各帝国興亡史の概観を通じ、それぞれの何処が「帝国」的なのか、こうした枠組みを可能ならしめる要因や掘り崩す要因は何かを示していきます。その上で、ロシアやソ連の歴史を紐解き、「帝国」としての興隆や衰亡に関して考察を加えていきます。
 本書には至るところで鋭い洞察が示されており、読んでいてハッとすることも頻りです。ただ、考察対象が空間的・時間的に極めて巨大であることもあってか、筆者が一番訴えたいテーマが何なのか、いったい何を論証して世に問いたいのか、一見しただけではハッキリとは分かりません。全体を通じての印象は、「超人的な学識を誇る歴史フリークが興に任せて書いた長大なエッセイ」といったところです。
 いずれにせよ、こんな本を書ける人はめったにおらず、また読んでいて楽しい本でもあります。大部な本ですが、とにかく一読をお薦めします。
膨大な仮説と検証の集大成に圧倒される

アメリカの対イラク政策などを読み解く際、「覇権」の論理を理解していなければ全く見当違いの議論しか生まれない。その意味で、この大著の今日的意義は極めて重大である。日本ではなじみの薄い地政学的バックグラウンドをベースに、文化的考察、民族学的アプローチなど、さまざまな角度からの仮説を構築し、それぞれ検証する作業を繰り返している。この本ではロシア帝国をライバルの大英帝国やハプスブルグのオーストリア・ハンガリー帝国やオスマン帝国などと比較しているが、そこから導き出されるメッセージは、今日のアメリカの覇権についての独自の視点なような気がしてならない。文章は分かりやすく明確だが、国際政治、世界史に関するある程度の基礎がないと読みこなせない大作である。



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